新作ショートショート 『 括りつける 』(くくりつけると読みます)

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ショート・ショートを書きました。
次の収録の時に録れるかわかりませんが、
問題提起型といいますか。
議論型 みたいな、作品です。

差別みたいなものの、扱いの難しさ
らしきことをテーマにしていますかね。

これ書いてて思いましたけど、
やっぱり僕は、ごみとかごみ集積所が好きなんだな
って思いました。
それと、カラスも実は好きで。
なんとか出したい出したいって思っていたんですが、
その割にあんまりカラスはわたしの作品に出ていない
ので、出せてよかったです。



『 括り付ける 』         作:沖野周平

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カラスセリフ)
『何ジロジロ見てんだ!?・・俺が黒いからか?』

人物1)
人は、単純なものに、
それ以外の意味を、括り付ける。

黒い。
白い。
あったかいところ出身。
都会生まれ。
離島出身。


背が高い、低い。
男、女。
ブ男、・・・美女。

その事柄は、ただその現象を表し、
その事柄が、ただ、目に見えているだけ、なのに。
人は、その単純なものに、
それ以外の意味を、括り付ける。

人物2)
・・・・んなこた、ない。
何も、あて外れな意味を括り付けてるわけじゃないさ。
黒いのに悪いのが多かったり、
白いのに野心的なやつがたくさんいたり、
あったかいところ出身のやつはこういう感じのやつ、多いよなとか、
都会生まれはこう、離島生まれはこう、っていうざっくりしたイメージがあって、
言ってる。

背が高い、低いも何となくそれぞれ、性格の傾向、あるし、
もちろん、男と女もそう。
話好きな女、孤立しやすい男、みたいなことは実際にあるし。
見てくれだってそう。
ブ男と美女の性格の傾向もあると思うけど、今ここで、それについてのコメントは避けよう。

1)
なんで、それだけコメントしないのか、わからない、けど。
差別の極みの数々を、今。聞きたくないけど聞かされてしまった、
という感じだ。
今あなたが言ったイメージはあなたが抱いたイメージであって、
それが皆んなかどうか、わからない時点でそんな事を、いうことは
許されない

2)
被せながら)
いちいち発言するのに、全国民のアンケート結果でも必要なのか。
そんなんじゃ、日常会話なんて なりたたねえよ、あほかい、あんた。
そんなちょっとくらい、人から気に食わねえことを言われたぐれえで
差別されただの、侮辱されただのってさ。
無菌室な適温な部屋で育ってきたのかってんだ。
それならずっと、無菌室な適温な部屋に死ぬまでいてくれよ、って。
俺は言いたいね。いてくれよ、ずっと。そのあんたが好ましいところによ。
勝手にこっち来んな

1)
被せながら)
無菌室な適温な部屋に居た人が、それ以外の場所に出ちゃいけない。なんて
いう権利は、誰にもありませんよ。
そもそもそこが無菌だとか、適温だとかは、誰が決めるんですか。
あなたですか?わたしですか?それとも

2)
被せながら)
歴史を重ねることで生まれてきた常識とか制度ってもんが決めるんだよ、そんなもん。
キチンとそういうことが決まってれば、憲法なんてなくたってやっていけるし、
実際そういう国だってあるんだ。そういうものを大事に国を進めていかないと
あんたみたいな自分の権利とか自分の訳の分からない気持ちばっかり大切に
して、人に文句ばっかり言って、自分では何にもしないような人間

1)
被せながら)
失礼にも程がありますね、表に出てください!!!

2)
(笑)表に出て下さい?殴り合いでもするか?
温室育ちさん。

1)
表に出て、話し合って、それでも話し合いがまとまらない場合は、
・・・裁判所に、いきましょうか。

2)
笑い声。(耳障りの悪い笑い声)

男)
・・・・目が、・・・覚めた。
・・・夢見が悪いとは、このことだろう。
なんていう夢だ。
なんでこんな夢を見なくちゃ、ならないんだろう。

気を取り直す為、僕はシャワーを浴びて、
服を着替え、
溜まっていたごみ袋を両手に一袋ずつもって、
ゴミ捨て場に向かった。
きちんと捨てないと、また溜まってしまう。

ゴミ捨て場の傍の電柱から伸びている電線に、黒いカラスが
一羽、とまり。僕の方をじっとみている。
その真っ黒い目と、僕は、目があった。


カラス(以下カ)
『何ジロジロ見てんだ!?・・俺が黒いからか?』
カラスが口をパクパクさせて、僕に話かけてきた。

夢がまだ続いているのか、と思った。
でもこれは間違いなく実生活だ。ぽっぺたは今両手が塞がって
いるからつねれないけど、そんなことをするまでもなく。
今、実生活だ。確認するまでもない。


男(以下お):僕に、話しかけてます?
カ:ああ、そうだよ。話かけて悪いか。
お:悪くないですけど、ちょっと驚いたな、って
カ:とりあえず、なんでジロジロ見てたか、答えろよ。
お:あ、え、まあ、えっと。なんとなく、ごみを狙ってるのかなあ、
って思いまし、て。
カ:ざけんじゃねえよお前。カラスが全部ごみあさりするって思ってやがんだな、
この野郎。
お:あ、すみませんすみません。そんな訳ではないです、すみません。
(ぼくは、このカオスな状況から距離を置くため、ごみを捨て、この場を離れよう
とした。)
カ:括り付けるんじゃねえよ。
お:は、はい?
カ:カラスはごみをあさる、カラスはしゃべらない、カラスはずる賢い。
そんな事柄を、括り付けるんじゃねえよ。

お:
(背中から、カラスに大声でそんなことを言われて。・・・・その時。
ふと、ほっぺたをつねってみた。
・・・・どんなに強くつねっても痛くない。まるで麻酔がきいているように、
まったく痛くない。ほっぺたは、小さいころのように、柔らかく変に、つねりがいがある。
・・・どこまでつねったら痛さを感じるか、僕は、知りたくなって。
強くつねった頬の肉を、反時計回りに強く回した。自分でも大丈夫かな、って思うくらい、
強く、回したら、
顔の肉が。
プロレスラーのマスクの様に、
ずるり、と。
剥がれた。

ふと気づくと、
ぼくはベッドに横になっていた。

重いからだを起こし、服を着替えようと、
ウオークインクローゼットの扉を開け、鏡で、自分の顔を確認する。
顔は、頭蓋骨剥き出しになっている訳ではなく、そのままの顔に戻っていた。
かっこよくも、カッコ悪くもない。
・・・ありふれた、何の特徴もない顔が、そこにあった。

ふと、背中に何かの気配を感じて振り返ると、
夢で議論をしていた人、二人と、カラスが。

ウオークインクローゼットの奥で。
お互いを。
睨み合っていた。

-fin-

この記事へのコメント

  • 沖野周平

    人物1と2で議論している段階では、まだ議論になっている。
    それが段階が進み、カラスは話しをしない、カラスはごみをあさる、
    カラスはずる賢い、という『事実の事柄』すら、第三者なり
    世間なりから、差別だ・侮蔑だ、と言われてしまう世の中に
    なっていくのではないか。
    事実を事実と言えない世の中を懸念して書いている、という
    感じですかね。
    2020年12月09日 21:05