詩 『 あの時 』


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詩 『 あの時 』         作:浮蜘蛛

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今を生きよと師匠が推奨し。

今を生きると弟子が推進し。

やるぞ、思うぞ、そうするぞ。

今をこそ生きるのだ、この瞬間に命ありと。


思いながら邁進するなり、すぐ。
ものの数分で。


『あの時』、が。

『あの時』が、沸き上がる。


あの人と別れた時。
かの人に罵声を浴びせた時。

若かりし、あの日。


不義理不義理が、
未成熟から溢れ返り、
こぼれこぼれて、
また沸き上がり。


『あの時』のことを
忘れられないのは、なんでだ。

なんで、なんでだ。


師匠が推奨、今を生きよ。
弟子が推進、今を生きる。

弟子なりに得るところあって、
周りの仲間にそれを伝え。

やがて自分が師となりました。


なーんて、ことになりはしないかと
思うや否や、『あの時』が。


『あの時』の情景が、
投影される。

両眼の先に。

自分が映写機になったように。


投影、される。



師匠に問うた、なぜ忘れられないのかと。

師匠は答えた。
「お前は未成熟だからだ。」


弟子は問うた、どうすれば未成熟から脱することが
できるかと。

「決断せよ。」
と師匠は言った。


決めて、断つ。

決めて、背後を断ってやり切れと、師匠は言った。



『あの時』が、今を歩く自分の前に映し出される。

決めて、断つことをしないことには、いけないと、
師匠は言う。



『あの時』と決別すること。

それを 決断することが、
自分に、出来るか。



『あの時』。


古い団地に意図せず出来てしまったような
Y字路の。

その、一方の路を選んだ、『あの時』。



『あの時』。


-Fin-

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